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先日その牙と爪によってグソーを遺跡外へ弾き帰した牙蜥蜴が、低いうなり声を上げて砂の上にゆっくりと伏した。グソーはその場に尻餅をつくようにへたり込んで足を投げ出し、ぴくりともしなくなった牙蜥蜴を眺めながら大きな息をひとつついた。そのため息がつき終わるのと同時に、砂に埋もれるように倒れこんでいた石壁がゆっくりと起き上がる。心配そうにあたりを見回す石壁の頭(?)をポンポンと撫でながら、グソーは「お疲れさん。勝ったよ」とウインクして笑ってみせた。斯くしてグソーのリベンジマッチは、見事勝利を収めたのである。
一息ついたグソーはその場に足を投げ出したまま手を伸ばし、放り出されていた荷をずるずると引き寄せて水筒を出しその中身を呷った。ぷはっと水筒から口を離して大きく息を吐き出した後、口の端にこぼれたぬるい水を手の甲で拭いながら、グソーはようやくのろのろと立ち上がって牙蜥蜴の死骸にそっと近づいた。
牙蜥蜴の鱗のない白い腹にはグソーの呪術による幾つかの痣のようなものが浮かび上がり、また鱗の所々にはゴージャスな五寸釘が打ち込まれている。凄惨とまではいかないがやはり痛々しい生き物の死、それも自分の手によるものを目の前にして、グソーはそっと膝を折ると、目を閉じて祈りの言葉を紡いだ。
しかしグソーは様々なものが何かの死から生る恵みによって成り立っていることを知っていたし、それが自然なことだとも考えている。なので祈りの後に牙蜥蜴の半開きの口をこじ開けて、装飾や防具の良い素材になりそうな大きな牙を頂戴することを全く躊躇わなかった。
砂地はまだしばらく続いており、グソーは伸びをしながらその果てを見やる。様々な冒険者たちがグソーが目指す同じ方向へ進んでいくのを眺めながら、グソーは荷を担いで歩き出した。