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FalseIsland Eno.1620
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 author : 宝石商のグソー ×
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グソーが深い昏睡から目覚めた時には辺りはすっかり明るくなっており、倒れこんでいる自分のすぐ傍を冒険者たちが通り過ぎる音が聞こえた。薄く目を開くと、心配そうにこちらを覗き込んでいる石壁でグソーの視界はいっぱいになった。
まだふらつく意識を抑え込むように固く目を閉じながらグソーがのろのろと体を起こすと、グソーの頬や髭や衣服に遠慮なく貼りついている砂がパラパラと零れていった。ふと右腕に鋭い痛みが走る。見やれば数箇所に血が滲んでおり、それを見た瞬間、連鎖のように体中あちこちに鈍い痛みが走った。そこでグソーはようやっと、昨夜突如現れた巨大なハムスターにこれでもかというほど齧られまくり痛めつけられ、ついにその場に倒れた事を思い出した。

「また遺跡の外に飛ばされないだけ良かったか」と心配そうな石壁に語りかけながら、グソーは荷を改めた。どうやら盗賊などの手はついていないらしい様子に感謝しつつ、度数の高い蒸留酒を引き出して口に含むと、傷口に向けて噴きつけた。びりびりと傷口に沁みるのを情けない顔で我慢しながら、グソーは更に荷の中から薬草を磨り潰したものを蜜と練った軟膏を取り出し傷に塗りこみ、さらに沁みるのをさらに情けない涙目の顔で我慢しながら、清潔な布を取り出して引き裂いて器用に傷口に巻いていった。

取りあえずの手当てが済み、グソーはそこらじゅうの痛みに顔を引きつらせながら立ち上がると、やがて終わるだろう砂地の果てを眺めた。どうやら砂地が途切れたその先には、どうやら床の地帯が続いているらしい。やはりこの遺跡がどういう作りになっているのかさっぱり検討もつかなかったが、この不思議さにもいよいよ慣れてきているグソーはさほど気にせず、いつものようにのらりくらりと歩き出した。


床の一帯はどこかひやりとした空気が流れており、砂にまみれたグソーの体の熱を少しずつ冷ましていくようで、そのうちに傷の痛みも徐々に引いてきた。傷の具合が良くなってくると楽天家のグソーはもういつもの調子で、あの子と行くのに遺跡の外にどこか良い店を探さなくちゃならないなあ、しかし次に遺跡の外に出たらまずは医者に診てもらおう、げっ歯類は怖いからなあ。それから体をキレイにして、宿をとってぐっすり眠ろう。それから夜中に起き出して酒場に行って…などと他愛もないことを考えながら、一本に伸びる床地帯の探索をのんびりと進めていくのだった。

そうして歩を進めるうちに、グソーの行く先になにやら道を塞ぐ様にして立っている人影が見えてきた。怪訝に思いながらもグソーはそのまま歩いていくと、それはどうやら揃いの装いをした兵士であるらしい。そしてその脇には壁に気だるそうな青年が一人もたれかかっており、彼はグソーに気がつくとつまらなそうに「あ~…まぁた来たよ、ほら出番だ手駒。さっさとやっちゃって。」と言った。グソーはおや、と立ち止まる。
「しかし隊長…良いのですか?我々も早く先へ…」と返す兵士達を、「なに?逆らっちゃうの?この第14隊の隊長カリム君に逆らっちゃうの?」と、青年はジロリとその垂れた目で睨め付ける。仕方なしと言った具合で、兵士は眉間に皺を寄せながらもグソーに向き直り得物を構えた。
グソーはああ、と思わず声に出しながら頷いた。先日歩行雑草に襲われていた少年が言っていた「ショウタイ」とは、彼らのことに違いない。しかしどうにも穏やかにこの場を通してくれそうにない様子に、グソーもまた仕方なく左の袖に痛む右手をそっと掛けた。

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 author : 宝石商のグソー ×
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