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FalseIsland Eno.1620
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 author : 宝石商のグソー ×
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歩行雑草と呼ばれているらしいそれを呪術でもって打ち負かすと、グソーはひとつ息をつき、膝を曲げずに屈み、足元のおいしそうな草を拾い上げた。グソーはそれを元から落ちていたものだと願いたくあったが、どうやら歩行雑草から抜け落ちたものらしい。何にせよ食糧の確保が充分でない今であるし、栄養価が高そうなおいしい草を捨て置く理由もない。
やれやれと軽く肩をならすグソーの元に、木陰に回って隠れていた子供が駆け寄ってきた。子供はどうやら本に夢中になっていたのか、危険が去ったと踏むや否や、大事そうに抱えた本の内容を、グソーに向けて楽しそうに話し出した。グソーはしばらくうんうんと笑顔でそれを聞いていたのだが、一向に話が終わりそうにない。しばらくしたところでグソーが笑顔のまま軽く片方の眉をあげると、子供ははっとして、照れた様子で話を止めた。そして改めての礼を言うと、ここから真っ直ぐ行ったところにショウタイがいるので気をつけて、と言い残して去っていった。

グソーはそのショウタイの存在をとくに気にすることもなく、のんびりした様子で探索を再開した。歩を進めるうちに、いつしかグソーの足元は草原から遺跡らしい床に変わり、潜む魔物の気配も変わったようである。
遺跡らしい壁も現れて、腰掛けやすそうな段差も見える。グソーは休憩するのに具合の良さそうな一角を見つけると、肩に背負った荷を降ろし、腰元に下げていた山羊の胃袋で出来た水筒を呷った。口元にこぼれた水を刺青のなされた左手の甲で拭いあげると、水筒を戻しながらその場にどっかりと胡坐をかきかき座り込んだ。
グソーは下ろした荷を胡坐をかいた足の上に引き寄せて、その中から荒っぽくごつごつとした麻布の包みを取り出した。グソーは慣れた手つきでそれを広げると、中にはまたごつごつとした麻布の包みが無数に入っており、丁寧に包まれたその麻布を取り払うと、未加工の鉱石がにぶい光を覗かせた。5、6ツの包みを開けたところで大きな傷がないことを確認し、グソーは包みをまた荷に閉まった。
グソーは次に紅色の羅紗布に包まれた箱を取り出すと、右手を水と塩で軽く清めてから蓋を開けた。箱の中にはやはり紅色のベルベット地が山の連なりのように敷き詰められており、その谷にはひしめくように色とりどりの宝石が埋め込まれている。グソーはやはりそれらに新しい傷がついていないことを確認すると箱を閉じようとしたのだが、ふと視線を手元から外すと、グソーの方を見つめている者がいることに気づいて手を止めた。

一人は凛とした、厳粛な雰囲気の女性である。グソーはそのすらりとした肢体や烏羽色の長髪、近寄りがたいような美貌に見覚えがあった。遺跡外で行き交う女性達を眺めていた中でも特に印象深く、いつものように声をかけようとしたのだが、その厳粛流麗な姿に軽率に声をかけることが躊躇われ、そうこうしているうちに人込みに見失っていたのだった。
もう一人はグソーと同じか、それよりもう少し年を食った男性である。服装の視覚効果も合間ってストンと縦に細いような印象のグソーとは違い、着込んだ服の上からでもその筋肉の隆起が見て取れるがっしりと逞しい体型で、ゆるく纏めた長髪が小粋な雰囲気だった。
グソーは二人の客ににっこりと微笑むと、閉じかけた宝石箱の蓋を開きなおして二人のほうへ回して見せたのだった。

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 author : 宝石商のグソー ×
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