忍者ブログ

mashriq

FalseIsland Eno.1620
A A A
HOME
2024
05
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 author : 宝石商のグソー ×
   △ 

グソーは島に到着して、まずその招待客の多さに驚いた。
島の狭い船着場に次々と船がやって来ては、多種多様の井出達の人々がぞろぞろと降りてくる様子は圧巻である。
見れば訪れた招待客は人間だけではない様子で、獣人、エルフ、それらの混血、精霊のような存在まで、実に様々である。グソーの土地には人間外の異種族はあまり見られなかったので、言い方は悪いが、グソーはまるで動物園に来て夢中になった子供のように目を輝かせ、この不可思議な招待状に感謝した。
グソー自分と異なる文化を持つ者との交流が好きな男であったので、多種多様の土地の人々と交流出切るだろうことを考えると、うっとりと目を閉じた。さらにもしかすれば、彼らはグソーの生涯の友となるかもしれないのだ。グソーはそんな人々の群れに端から一人ずつ挨拶をして回りたいくらいであったが、さすがにそれは諦めた。

そして何より強くグソーの目を惹きつけるのは、美しい女性達の姿である。
剣士、魔道士、踊り子、白い肌、黒い肌、赤い髪、金の目、尖った耳や、獣のような尻尾…皆二つとない独自の美しさである。魅力的なオーラを活き活きと放ちながら遺跡へ向かう彼女達を、グソーは宝石を眺めるようにうっとりと眺めた。

グソーがこの島に来た目的は、宝玉を手にする事の他にもう二つあった。
一つは世界中から集まるであろう招待客達と、単に宝石商としてだけでない繋がりを築く事。
そしてもう一つは、グソーの心を強く惹きつける女性を見つけ、できれば妻として迎え入れる事だった。

グソーは妻と死に別れてから20年近くなる。その間にグソーは沢山の女性と関係を結びはしたものの、再び婚姻を誓い合うに至る女性とは出会えなかった。無論すべての女性が魅力的であったし、グソーを憎からず思っていたのだが、破綻した原因の9割が、グソーの恋をつまみ食いして歩くような性質――妻と死に別れ、その性質はより顕著になった――である。それに愛想を尽かす者もいれば、嫉妬に怒り狂ってグソーをうんざりさせる者もいた。
グソーはどんなに強く愛した相手であっても、一度関係が壊れてしまえば、向こうから再び歩み寄るのを待つのみで、決して追いかけようとしない男である。しかしながら、その間も浮ついた性質を抑える事はなく、次から次へと様々な女性に声をかけてしまうのだった。

つまりそんなグソーと番になれる女性とは、魅力的でありかつ鷹揚で、女好きのグソーを「さあ、そろそろ戻ってきなさい」などと逆に飼い慣らすような余裕のある女性であるが、40過ぎのやもめ男をそう扱える女性はなかなか見つかるはずもない。
しかしグソーは、このような不可思議な島への招待状を受け取り、無謀としか言えないような遺跡の探索をやってのけようという女性達の中にならば、彼の理想とする女性が一人くらいいるのでは…などと、楽観的に考えているのだった。

グソーは青い瞳を細めながら、そんな淡い期待で胸をいっぱいに膨らませた。そして情報や食糧の確保よりも先に、さっそく目に留まった女性に声をかけ始めるのだった。
(そして、その軽すぎる口ぶり手振りに、ことごとく誘いを却下されるのだった)

PR

 author : 宝石商のグソー ×
     TRACKBACK :    COMMENT : 0  △ 

グソーは40そこそこのやもめ男だが、それ程老け込んでおらず、日に焼けた体はそれなりに逞しかったし、黒い髪に青い瞳がよく映える、精悍な顔つきだった。
井出達は砂漠の民のそれである。彼は宝石・鉱石を主とし、その他美術品や古文書を扱う行商人であるため、決まった住居を持たず、ある大きなオアシスの街の宿を拠点にし、ラクダに乗って各地を転々としているのだった。

その日も2ヶ月ぶりに、街の宿へ戻ったばかりだった。
グソーが拠点としているこの宿は、一人の快活な老婆が切り盛りしており、グソーのような故郷などあってないような行商人たちが多く利用していた。
皆殆どが顔なじみであり、それら全員の母親のような老婆の存在も手伝って、グソーにとっては家も当然の場所だった。

裏庭の掘っ立て小屋にラクダを繋ぎ、重い荷物を部屋に運び終えると、グソーはそのまま宿の裏口にある私書箱へ向かった。
住所を持たない行商人は、馴染みの宿に私書箱を持つことがほとんどであり、グソーもまた例外でない。
久し振りに開いた私書箱の中には、手紙が3通、小さな包みが1つ届いているだけだった。2通の手紙は馴染みの行商仲間からであり、包みは随分と前にこの街の男性に貸した古い本だった。

そしてもう1通は、この辺りの手紙には珍しく、真っ白な美しい封筒である。
グソーは砂に汚れた様子もないその封筒を訝しげに手に取ると、眉を顰めながら封を切った。そしてゆっくりと青い瞳で文面を検め、ははっと小さく笑いを漏らした。

これは、日々退屈を感じている諸君への招待状―――。
グソーは顎鬚を撫で付けながら、そんな出だしで始まったその手紙を読み終えると、しばらくその場で封筒をひっくり返したり、日に透かしてみたりしていたたが、ふいにニヤリと口の端を引き上げると、手紙を懐に仕舞い込んで、近いうちに船の手配をしなければと考えながら、その場を後にした。

 author : 宝石商のグソー ×
     TRACKBACK :    COMMENT : 0  △ 
"宝石商のグソー" wrote all articles.
http://mashriq.blog.shinobi.jp/
PRODUCED BY NINJA TOOLS @ SAMURAI FACTORY Inc.
PR : 忍者ブログ × [PR]
 HOME